ゲームのテンポと余暇時間
こんにちは。林です。
皆さんは一日の中でどのように余暇を使っていますか?
仕事や家事などをこなし、ある程度決まったサイクルで生活をしていると、余暇時間も同様に一定の箇所に落ち着く場合が多いと思います。
今回は余暇のなかにゲームをどう入り込ませるか、ということをテーマに書きました。
ーーーーーーーー
生活をしているとゲームを遊ぶためにまとまった時間をとれるタイミングは限られる。私の場合、起床→朝食→仕事→夕食→就寝というサイクルの合間にゲームを遊ぶことになり、おおかた夕食と就寝の合間がその時間に充てられることが多い。スマートフォン向けに作られた操作の少ないゲームならば、スキマ時間に数分~十数分程度のプレイ時間となるのだろうが、ある程度大きい規模のゲームを遊ぶ場合には少なくとも1時間は欲しいところだ。
なぜ、こういうことを書こうかと思ったか。きっかけは『STRANGER OF PARADISE FINAL FANTASY ORIGIN』というタイトルを遊んでいた時に、前述したサイクルの中に収まる、ちょうどいいゲームだと感じたからだ。
『STRANGER OF PARADISE FINAL FANTASY ORIGIN』
本作はロールプレイングゲーム『FINAL FANTASY』(『FF』)シリーズの番外編的なアクションゲーム。主人公と仲間たちがダンジョンを攻略し、最奥地に待ち構えるボスを倒す…というゲームサイクルを持っている。このサイクルの中で強い装備品を集めていくことが本作の根幹となっている。こうした要素はゲームの括りとして「ハック&スラッシュ」とよばれている。
ひとつのダンジョン攻略にかかる時間はおおよそ1時間程度。途中にあるセーブポイントに立ち寄れば、ダンジョン攻略中にゲームを中断することも可能となっている。本作には長くはないもののストーリーがあり、新しいダンジョンへの挑戦時やボス戦の前後にそれらを語るシーンが差し挟まれる。前述したハック&スラッシュの要素がこのゲームの根幹にあり、ストーリーはゲーム全体を見れば必ずしも主題ではない。しかし、ダンジョン攻略に伴って少しずつ進行するストーリーを見られることが、私にとってこのゲームをプレイするモチベーションになっていた。
本作のストーリーは初代『FINAL FANTASY』をベースとした翻案である。また同時に各ダンジョンは過去のシリーズからの引用となっている。ダンジョン攻略を繰り返すというゲームの基本的な枠組みは変わらないが「次はどのFFがモチーフにされているのだろう」「ストーリーはどう展開していくのだろう」という期待が、ひとつのダンジョンをクリアするという短いスパンで成就し、ひとまずは完結する。毎回異なる味と確実な結果を楽しめるという意味で、本作は日替わり定食的なパッケージ化がなされている。
『FF』シリーズを知らないプレイヤーにとって、本作のストーリーテリングは物語の全体像を示すうえで十全のものとは言いがたく、意味不明なまま終わってしまうかもしれない。そうした懸念はあるものの、根幹となるアクション、ハック&スラッシュの要素の出来はよく、マルチプレイにも対応しているため、ストーリーに期待をかけず純粋にゲームとして遊ぶこともできるだろう。私にとって本作は、初代『FINAL FANTASY』を題材とした設定、それにまつわる主人公・ジャックの無名性が興味深く、繰り返されるサイクルの1時間(多いときには3時間)をつぎ込みたくなる一作だった。
日々の決まった時間を充てるのが上記の『STRANGER OF PARADISE』だとすれば、それ以外、ゲーム外での人間の活動をゲームとしたのが『Pikmin Bloom』だ。
『Pikmin Bloom』
本作は任天堂の人気シリーズ『ピクミン』シリーズを題材とした基本無料のスマートフォン向けAR位置情報ゲーム。AR位置情報ゲームとは、スマートフォンなどの端末に搭載されたGPS機能を使い、現実の場所や地形を利用したゲームやアプリのことで、有名どころでは『Ingress』『Pokémon GO』がある。
プレイヤーはふしぎな生物「ピクミン」たちとともに歩くことで、花を咲かせ、ピクミンの数を増やしていく。近くにいる他のプレイヤーと協力してキノコを壊したり、アップデートによってプレイヤーのモチベーションを牽引する「チャレンジ」といった要素も追加されたものの、全体としてはいまもって目的が曖昧なゲームといえる。そしてその曖昧さこそ、私が本作を続ける理由にもなっている。
本作はただ歩くだけでもある程度目的は達せられるし、極端な話単なる万歩計として利用してもよい。また週ごとに課された目標が達せられなくても、それに参加しただけで報酬がもらえる。これをやらなければ損をするという感覚は、他のソーシャルゲームと比べて格段に少なく、また突き詰めてもこのゲームに最終目的はない。本作はゲームの仕組みだけでなく、人間同士のコミュニケーションとしても緩いつながりが保たれている。このことがネガティブな感情が生じることを防止し、プレイヤーが消耗しないソーシャルゲームを実現している。
私はあまり課金を行うほうではないが、本作に関しては何度か課金を行った。これは切迫感に駆られてのものでなく、こうだったら日々がもっと楽しめるだろうなという感覚に基づいてのものだった。そこに至るまでの道のりに不自然さはなく、そうでなければお金を払おうと思わなかっただろう。願わくば本作には今後もこの程度の緩さを保ってもらい、私も楽しんでいきたい。
さて、『Pikmin Bloom』といった位置情報ゲームは、人間のアクティブな面を利用していたわけだが、その逆、人間のパッシブな面である「睡眠」を活用したゲームが登場した。それが『Pokémon Sleep』だ。
『Pokémon Sleep』
『Pokémon Sleep』は『ポケットモンスター』(『ポケモン』)を題材とした睡眠ゲームアプリ。枕元にスマートフォンなどの端末を置くことで睡眠の深さを測る、睡眠計としての機能を持っている。
ゲームの仕組みとしては、睡眠計のスコアに応じて眠気を催したポケモンたちが集まってくるというものとなっており、その発見・収集が主な目的となる。睡眠とゲームを組み合わせたタイトルは本作以前にもリリースされていたようだが、人気シリーズ『ポケモン』の一作ということで、睡眠ゲームアプリの存在を本作で知ったという人も多いだろう。実際、私もそのひとりだ。
当たり前だが睡眠をしている間にプレイヤーは操作をすることができない。そのため就寝前の準備と、起床後の結果確認に操作が集中することになる。特に起床後の操作はそれなりに多く、私の場合は出勤前の時間帯ということもあり少々煩雑に感じることがある。とはいえ、基本的にアプリを起動する機会は一日のうちに就寝時と起床後の一回(睡眠計測の上限が一日二回のため多くても四回)なので、必要最低限の起動で済んでいるともいえる。
私は睡眠計をこれまで使用したことが無く、「睡眠を活用してポケモンを収集する」というゲームらしい点に惹かれて本作を始めた。しかし実際にプレイしてみると「自分の睡眠時間を数字で見せられる」という従来の睡眠計の機能から得られる体験が最も印象に残った。睡眠時間をそれほど取っていないことは自覚はしていたし、頭の中でおおよそこのくらいだろうという概算も持っていた。ただ、画面上に数字という形で現れてしまうと、「まあいいか」とはならないのだ。しかもそれが現れるポケモンの数に比例するのだから。
数字に弱い人間がコントロールされているもいえるし、睡眠をアプリによって管理されているというのは、なんだかディストピアめいた印象も抱かせる。一見、人間の自由な活動を抑制するように見える『Pokémon Sleep』だが、睡眠もまた立派な人間の自由な活動のひとつだ。ゲームを遊んだり、ゲームについての文章を書いていると、睡眠を蔑ろにしてしまうことがある。そのように考えるとゲームと睡眠は対立するように思われるが、『Pokémon Sleep』はゲームという体裁をとることで、そのふたつを共存させている。限られた時間のなか、他の活動との対話を促すものとして、私は本作を活用してみたい。
タグ / Tags